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ヤブツバキ

2014.01.25 (Sat)

ヤブツバキ

 年の瀬の寒い日に「もも」が急死した。
形見の品を残すのはつらかったが、赤色の首輪だけいつも座っていた座布団の上に置き、一日泣き暮れてしまった。
 きっと人は、たかが猫だと笑うだろう。しかし前日まで元気だったので、突然の別れにとても戸惑った。
 悲愴な面持ちの私に、弟は寿命だとやさしく諭してくれた。決して猫の13歳は短命ではないとも。
 猫の平均寿命は明確なものではないそうだが、「もも」の年齢を人間に換算すると、1歳ですでに18歳。
それ以後は1年を4歳と換算するので、18+12×4で66歳となる。
私と同い年だと知った。
いつの間にか追いつかれていたのだった。
 病気だったのなら、なぜ早く気づいてあげられなかったのか。
硬く冷たい棒きれのようになった「もも」を抱きしめ、心からわびた。
 「もも」は13年前の秋、弟の軽トラックのエンジンルームに迷い込み鳴いていた。
満月の月明かりの中、片手ほどしかない体を震わせ、必死で母親を呼んでいた。
猫が大嫌いだったはずの夫は、本を買って離乳食から奮闘し、私は始めて猫の顔が1匹ずつ違うことを知った。
息子の独立後のわが家に笑いとやさしい空気が流れ、育てたつもりが癒されていたのだ。
 庭のヤブツバキの下に「もも」は眠る。
私の「ありがとう」を語るように、赤い花はぽつぽつと咲き、やがて小さな墓を包み込めばいい。

2014年1月12日(日)毎日新聞掲載「女の気持ち」
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11:12  |  毎日新聞掲載
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