FC2ブログ
12月≪ 12345678910111213141516171819202122232425262728293031≫02月

スポンサーサイト

--.--.-- (--)

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--:--  |  スポンサー広告

(10)巣立つ人、応援続けたい

2016.01.19 (Tue)

 夜間部の料理教室からの帰宅は遅くなり、月も星もすでに高くなっている。冬の中津原の夜空は、空気が澄んで自然のプラネタリウムだ。星がはっきりと輝いて美しい。

 放射冷却で「明日朝は霜が降り、日中は晴れるな」と、にわか気象予報士の気分で見上げる星空は広い。星を背負っての帰宅はずいぶん長くなった。
     *
 この冷え込みがあるから、内陸部の筑豊は白菜、大根、ホウレンソウなど冬野菜の甘みとうまみが増し、おいしく育つ。大寒の今、ブリ大根、白菜とカキのチャウダー、茎の赤い冬ホウレンソウのゴマあえなど、簡単な料理で十分身体は温まる。

 「温かい家庭は料理から。食で健康に」との願いで始めた「大場クッキング」も、今年で39年目を迎える。家庭で手軽に作れ、食べておいしい、季節感があるもののレシピを工夫し、数多く発信している。

 食生活の多様化と、料理を作らなくなっている現代社会で「手作り」を強要するものではない。忙しい時の早作り法や、スーパーで食材を買う時の目ききや選び方が、料理を作れると上手になる。利口な生活者として常に自身のアンテナで情報をキャッチできれば、楽しみは大いに増えると言える。

 有名レストランのミシュランガイドの星の数や各地のB級グルメ大会の順位などに興味を持ち、たくさん押し寄せる人のにぎわいは、庶民的な話題として平和の象徴のようなものだ。
     *
 食の楽しみには精神が安らぐ作用もある。2011年、料理教室の生徒や修了生で「おむすびの会」を誕生させた。世代を超えてコミュニケーション能力と絆を深めることと、スローな暮らしと食をすすめる会だ。

 1年に1~2度、自宅のモッコウバラとアケビの木の下のテーブルに、1人1品の料理を持ち寄り、料理説明をする。「おにぎり」は必ずみんなで作るが、会の名はご縁の意味の「おむすび」だ。庭から香春岳を眺めながらの野外の会になる。大きく口を開けてほおばる皆の顔は、日頃の疲れを吹き飛ばしてくれ、続けてきて良かったと思える瞬間でもある。

 今年5月の会から息子夫婦も加わるかも知れない。嫁の陽子は昨年、調理師免許と家庭料理技能検定4級に合格した。大阪・北新地の老舗料亭に勤務していて、ミシュランの星を持つ板前さんに付いている。

 芸術学部出身で、専門ではない料理や栄養に興味を持った日本的女性だ。今どき珍しく、茶道は小学生の時から親しみ、着物好きで人様の着付けもできる。

 縁とは不思議なもの、将来は自分なりに展開させ、前進すればよいと願う。夫も家庭料理技能検定4級を定年退職時に取得した。我が家は息子を除く全員が共通の資格を取っている。

 筑豊・田川の地に各地から人が集まって下さる。小さくささやかな料理教室は、食卓からの愛を育み、巣立っていく人々を大切に応援する場として、これからも続けていきたいと思っている。支えて下さった方々に感謝します。ご愛読ありがとうございました。

 <完>
スポンサーサイト
16:15  |  朝日新聞筑豊さんぽ道連載記事

(9)大切にしたい「家庭の味」

2016.01.13 (Wed)

 久しぶりの冬の日だまりの中、物干しざおに干した、帰省していた息子のパーカが風に揺れている。木綿で3Lの息子の服は乾きにくく、1枚残して帰った。我が家の洗濯機では2枚が許容限度のうえ、パーカは重いので干しにくい。嫁が毎日、巨漢の息子の洗濯物を処理していると思ったら、感謝するばかりだ。

 松の内を過ぎて、やっと新年を自覚している。年末から帰省してくる若家族を迎える両親がじわっと感じるけだるさは「来てうれし、帰ってうれし」の幸せ疲れだ。もし孫連れならば、なおさらだろう。これも昔、親から同じようにしてもらったことで人生は順送りに繰り返す。

 子供はいつしか親となり、嫁は姑(しゅうとめ)となる。時代背景も大いにあるが、その時がきて人の心がわかるというものだ。年を重ねるのも悪くない。今年は息子のダイエットに嫁はがんばると言った。ほほえましいと思った。
     *
 食育基本法の施行後、私は忙しくなった。学校、会社、団体などが食育を意識して組み込んだ授業やイベントの開催が多くなっていき、職域が広くなった。

 田川だけでなく、野菜のソムリエの講師では、九州各県を巡り、講義の終わった後には市場や郷土料理を見て味わい、記録した。

 スピード、利便性、効率化を追い求める社会で育った世代が本当に味わうことを知らないまま大人になった結果、「家庭の味」「家のごはん」が危うくなっている。

 子供時代に味覚体験を積み重ね、味わう力も、舌にいろんな刺激を与え、脳に送られて五感で判断する力が豊かな心をも生む。そして、それが食材から農業や漁業への関心を育てるかもしれないのだ。

 北九州市での仕事の一つは子供料理王選手権大会で、昨年10月に15回目を終えた。北九州市と同市中央卸売市場協会、小学校校長会、調理師連合会などが主催する。初回から審査委員長を務めさせていただき、テーマを決定する役目を仰せつかっている。

 第1回出場の子供たちは20代後半のはずで、いま現在どのような食生活をしているのか、気になるところである。レシピ内容についての質問にも近ごろは考えさせられる。材料表では「少々は何グラムですか」「ひたひたの水加減とは何リットルですか」。作り方では、「落としぶた」や「ザルにうちあげる」「煮含める」の意味など……。
     *
 学校で家庭科は普通科目に比べて進学に関係がなく、軽視され、家庭での料理経験が皆無での入校は、包丁で手を切りかねない、ゼロからのスタートだ。火を使い、鍋の中を気遣いながら、香りや型を確かめ味を仕上げていく。若者たちの中にはスマホの中のゲームのように料理を考える人もいる。五感で作り上げていく中での「塩梅(あんばい)」を伝えるのが難しい。

 日本国内の食が混乱している中、2013年に和食はユネスコ世界無形文化遺産に登録された。登録理由を目にして、日本人が自分の食卓を見直す時期への贈り物だと思った。
16:12  |  朝日新聞筑豊さんぽ道連載記事
 | HOME | 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。